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第1回 湿疹って何?

まずは湿疹です。湿疹は、非常に頻度が高いです。ちなみに、湿疹≒皮膚炎です。

それから湿疹・皮膚炎の症状は、湿疹三角で表されます。というと、お仕事でお疲れの皆様は眠くなると思います、、、。ので、ざっくりいうと、症状としては落屑性(かさかさした)の紅斑(赤み)があり、かゆみを伴うことが多いです。やや赤く盛り上がって(紅色丘疹)いたり、炎症が強いと水ぶくれ(水疱)ができたり、一部はジュクジュクしたり(浸潤)、かさぶた(痂皮)もくっついていたりします。ジュクジュクしたところには、黄色の浸出液が出てきます。これが固まる痂皮(かさぶた)のようになります。

カルテに記載する例としては、どこに?(上肢の屈折部に)なにが?(紅斑、漿液性の丘疹が)おおきさは?(直径3㎝)いつから?(6か月前から)あって、掻痒がつよい。なんて感じで書きます。

見た目は体部白癬(体の水虫)や疥癬(感染性のダニ)の症状に非常に似ています。だから、湿疹っぽいのを見たら真菌検査をして白癬や疥癬を否定します。ただ、真菌検査は完全な検査ではないので、何回もやらないといけないこともあります。

湿疹は何かの外からの刺激が加わってできる炎症です。もちろん、刺激に敏感であるかないかの体質もかかわっています。原因がわからなくて形も場所も分布も体質にも特徴がなければ、ただ湿疹と診断するしかないです。

原因がわかったり、皮疹の形や場所が特徴的だったりすると、名前がつきます。①高齢者で皮脂が足りないために起こるものを皮脂欠乏性湿疹、②頭部や顔面などの『脂漏部位』に出るものを脂漏性湿疹、③下腿にできて、『貨幣=コイン』みたいな形をしているから貨幣状湿疹といった具合です。④原因が分からないけど慢性的なものは慢性湿疹になります。⑤小さいころ(小児期)から長期にわたる湿疹があり、家族でも同じ症状があって(家族歴あり)、耳とか首とか関節のしわのところとかに主に症状があり、しかも、喘息とかアレルギー性鼻炎を合併している場合などは、アトピー性皮膚炎と診断できます。⑥特定の抗原(例えば、フルーツとか、ゴムとか、化学物質とか、金属とか)に対して、『かぶれている』なら接触皮膚炎、といった感じです。⑦これらの湿疹を掻き壊してしまうと2次的な湿疹ができてしまいます。掻けば掻くほど悪くなるんです。余計にかゆくなります。これを2次性の湿疹といいます。だから、痒くても掻いてはいけないんです。

そうです、原因も、場所も、皮疹の形、なんでも病名になるので混乱するんです。病名の付け方が統一されてないんです。だから皮膚科がわかりづらい原因にもなっているんですよね。

湿疹の最大の共通点は病理検査(麻酔をしてから皮膚の一部の4ミリ程度を切って、薄く切って染色をして顕微鏡で見る検査)をすると海綿状態(Spongiosis)があるということです。海綿状態というのは皮膚の細胞の間が浮腫(むくみ)を起こして広がっている状態です。

海綿状態のメカニズムは炎症を起こす体内のサイトカイン(炎症をおこす物質)のIL-4、IL-13という物質がかかわるといわれます。湿疹の原因は、乾燥とか刺激物質や体質などさまざまですが、結局同じサイトカインが活性化されるので同じ病理になるってことですね。

湿疹の類はステロイド外用がとても効きます。ただし、ステロイド内服は、自家感作性皮膚炎以外ではしません!自家感作性皮膚炎は全身の激しい症状があるので30mg位を数日の短期で使います。アトピー性皮膚炎では治療の開発が進んできています。プロトピック軟膏という、免疫抑制剤を塗ったり、コレクチムという炎症に関わる特定の酵素を抑える物質の軟膏を塗ったりします。重症な場合は、デュピクセントというIL-4やIL-13を抑える抗体の注射製剤やシクロスポリンという免疫抑制剤を内服したりします。