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第4回 帯状疱疹は水ぼうそうと同じウイルスの感染です。


帯状疱疹(たいじょうほうしん)は、最も頻度の高い皮膚疾患の一つです。1ヶ月に数人は新患を診ます。水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)という水ぼうそうを起こすウイルスが再活性化されることで起こります。水痘帯状疱疹ウイルスはHHV-3ともよばれ、ヘルペスウイルスの仲間です。

小さな頃に水ぼうそうになった記憶がありませんか?そのウイルスは完全に死んだわけではなくて、神経節(背骨の中にある太い神経)に何十年も潜んでいるんです。そして、宿主(患者さん)の免疫力(病原体に対する抵抗力)が落ちたときを狙って、数十年の時を経て再活動を開始します。神経を伝って、顔や腕、脚、体に出てくるのです。症状は、紅斑や集簇した小水疱が知覚神経に沿って出現します。これが帯のように連なるので帯状疱疹と名前がついています。ただし、この帯は片側性(片側だけに起こる)で、体を一周することはありません。体幹であれば、脊柱(背骨)から始まって、前の正中線で終わります。部位は体幹の肋間神経に沿ったものが多いですが、顔から四肢まで全身のどこでも起きます。カルテにはどの神経支配か記載しておきましょう。顔なら三叉神経領域ですし、C1-8・Th1-12・L1-5・S1-5 (神経の種類)などです。知覚神経(痛みを感じる神経)が傷害(侵される)されるので、刃物で刺されるがごとく鋭い痛みが出ます。

顔に病変があるときには、眼病変は頻度が高いです。とくに鼻先に小水疱があったら眼の病変にも注意です。鼻毛様体神経により、鼻と目がつながっているためです。顔面の帯状疱疹なら眼科にコンサルトしておくほうが無難です。それから耳介(耳)付近の帯状疱疹では顔面神経障害や内耳神経障害に注意です。顔面神経麻痺といって、顔の筋肉が動かなくなったりすることがあり、これはRamsay-Hunt症候群と呼ばれます。ただ、頻度はかなり少ないです。

それから下腹部に病変があるときは、膀胱直腸障害に注意です。つまり、膀胱や直腸を支配する神経がやられることがあり、排尿障害(おしっこが出なくなったり)や排便障害(うんこがでなくなったり)が起こることがあります。

診断は、Tzanck試験でBalloon cellを確認しましょう。水疱から水分をとって、細胞診をします。ギムザ染色をすると、風船のように大きく膨らんだ感染細胞が見えます。最近では、デルマクイックというキットでウイルス自体を検出することもできます。

皮疹の面積が広かったり、顔面神経領域であったり、あるいは水疱が神経支配領域に限定せず全身にも見られたりした(これを汎発疹といいます)場合には、入院が必要かもしれません。この時には点滴のアシクロビルを行うのが一般的です。軽症であればバルトレックス、ファムビル、アメナリーフという内服抗ウイルス剤を出します。痛みに関しては、基本はカロナール(一般名:アセトアミノフェン)です。痛みが強ければ、トラムセット(トラマドールとアセトアミノフェンの合剤)を使用します。これは結構効きます。それでも収まらなければ、麻酔科にコンサルトします。神経ブロックや硬膜外ブロックの適応となることもあります。非ステロイド系解熱鎮痛剤(NSAID)と抗ウイルス剤を併用すると重症の腎機能障害を起こすこともあるのでできるだけ避けましょう。帯状疱疹が治癒したあとも疼痛(痛み)が残ることがあり、これを帯状疱疹後神経痛といいます。そんな場合はカロナールやNSAIDは無効です。神経をなだめる効果のあるリリカやリン酸コデインを低用量から開始します。それでも収まらなければ、ペインクリニックへコンサルトし、神経ブロックを勧めます。

水痘・帯状疱疹は基本的に終生免疫ですが、免疫が弱ったりすると、稀に違う場所に再発することがあります。

最後に、帯状疱疹は感染症すので、免疫がない方には感染させるリスクがあります。ワクチンをしていない小さなお子さんや、免疫抑制剤を内服している方や高齢者には接触を控えたほうがいいです。